「丸本酒造」のご紹介

丸本酒造六代目の丸本仁一郎さん

丸本酒造は、岡山県浅口市で幕末の1867年から酒造りを続けています。岡山県は日本で晴天率が一番高く、なかでも丸本酒造がある浅口市竹林寺山付近は空気のゆらぎも穏やかなのだとか。

丸本酒造 六代目の丸本仁一郎さんは、「ここは宇宙に最も近い場所なんです」と話します。天体観測にも向き、東アジア最大の天体望遠鏡「せいめい」が設置されています。そのうえこの地に湧く水は、酒造りにぴったりの清らかなもの。創業当時の屋号「清水屋」であったことからも、そのことがうかがえます。

丸本酒造のおすすめのお酒

丸本酒造では、1987年から酒蔵好適米の栽培を行っています。

「自然の力、宇宙の力を総動員して、米作り・酒造りを一貫して行う――それが当蔵のモットー。宇宙の力とは、温度、湿度、光、水、重力といった自然のすべて。それらを感じながら、宇宙に一番近い場所で米作り、酒造りをしています」と丸本さん。

そんな環境の中で生まれた珠玉のお酒から、定番のお酒とちょっぴりユニークのお酒を3種ご紹介していただきました。

竹林 かろやか

◆特長

蔵の背後にある竹林寺山にちなんで名付けられた「竹林」シリーズ。

中でも「かろやか」は吟醸感がある香り高いお酒です。飲んだ瞬間は甘さを感じますが、5〜10秒のうちに舌の上で味がドライな辛口に切り替わります。

このお酒の特徴は、造ってから半年〜1年ほど経った生酒をブレンドしていること。お酒の味わいはその年の米の出来によって左右されるものですが、複数の生酒を混ぜることで、常に一定の味わいを保つことができるのです。

多くの蔵では、搾った生酒はすぐに瓶詰めをして火入れをしますが、丸本酒造では搾った後、生酒の状態のままー5度で保管。瓶詰めをするときにはじめて火入れをすることで、味にふくらみをもたせています。

 

◆ペアリングするなら…

淡泊な白身魚の焼き物からフォアグラのように重厚な料理にまでにマッチします。

よく冷やして飲むのがおすすめです。

竹林 ふかまり

◆特長

丸本さんが「たとえるなら、焼き鳥屋に伝わる30年もののタレを複数ブレンドしているようなもの」と紹介するお酒。

丸本酒造では約30年分の古酒をストックしており、それらをブレンドすることで味に深みを出しています。

ただし、混ぜる古酒の割合はわずか3~5%。大部分はその年の新しいお酒ですが、わずかな量の古酒が全体の味に影響を与え、まったく新しい調和を生み出します。

古酒は年数が経つほどに味が美味しくなるという単純なものではなく、3年周期で美味しい時期がやってくるそうです。

そのタイミングを見極め、今年の新酒に調和する古酒を2~3種類選んでいる、と話す丸本さん。

まさに、長年の経験によって研ぎ澄まされた感覚と経験から生まれるお酒と表現できますが、味わいは極めて芳醇で「これが古酒なの!?」と驚く人も多いのだとか。

 

「『竹林 ふかまり』の造り方は、シェリーの熟成方法『ソレラシステム』に近いかもしれません」と丸本さんは説明します。「ソレラシステム」とは、ストックしておいた一番古い酒からボトリングして出荷し、次に古い酒をそこに継ぎ足すもの。

一定の品質と味わいを保つためのシステムといわれ、根本の考え方に共通のものがあると丸本さんは考えています。

◆ペアリングするなら…

常温または燗がおすすめ。常温ならスモークビーフやブルーチーズなど、香りや味がしっかりとあるものを合わせて。

燗の場合、軽やかで淡白な料理を引き立てるので、白身、赤身を問わず焼き魚などと一緒に楽しみたいもの。

秋冬は、牡蠣の土手鍋からあっさりとした水炊きまで、幅広い鍋のお供になってくれます。

竹林 かろやか 大瀞

◆特長

「竹林 かろやか」を火入れせず、生のままで出荷するのが、秋限定の「竹林 かろやか 大瀞」。

最初のひと口を含んだときにふわっと広がる香りと、とろりとした舌ざわりが魅力です。

◆ペアリングするなら…

「こちらは料理とのペアリングではなく、このお酒そのものを楽しんでいただきたい品。『農』と『醸』『サスティナブル』を語らうPop Up 日本酒BAR』にもお持ちしますので、ぜひ味わってください」と丸本さん。

「農」が教えてくれたこと

きっかけは「原価」を考えたこと

蔵人が納得できる酒米を作るため、一つひとつの出来栄えを確認する丸本さん


丸本酒造が酒米作りを始めた1987年当時、酒蔵が米作りに取り組むのは珍しいことでした。

始めたきっかけは、「原価」について考えたこと。お酒造りの製造原価は、約半分を米代が占めると言います。

当時はお米の流通も価格設定も国が管理しており、大きい酒造メーカーも小さな酒蔵も、お米を仕入れる条件は価格も含めて同じでした。

「それはうちのように小さな蔵にとっては有利なことではありました。しかし、製造原価の半分を占めるものにオリジナリティがなくてよいのでしょうか。ましてや、一律の仕入れ条件がいつまで続くかわかりません。あまりのんびりしていられないと感じたんです」と丸本さんは、当時の危機感を語ります。

日本は長い間、お米を一粒も海外から輸入しないという方針でしたが、1995年にはお米の輸入を解禁。お米を取り巻く状況は刻々と変わりつつありました。

そんな状況を鑑みて、「お米の原価に対し、自分たちなりのオリジナリティを持たせたい」「どこで誰が作ったかわかるお米で酒造りをしたい」と、丸本さんは「農」を始めたのだそうです。

酒造りに寄り添うお米を求めて

米作りのきっかけは原価でしたが、農業への取り組みを通じ、丸本さんは酒造りにおける米の大切さを実感したと言います。

たとえば食べるお米において、等級が高いのは大粒のものです。そのために通常は、窒素肥料を増やし、たんぱく質が豊富なお米を作ります。一方、酒造りでは、たんぱく質は酒本来の風味を損なう原因になってしまいます。

普通のお米と酒米では、求めるもの自体に違いがあるのです。

では、お酒にぴったりの米を作るためにはどうするか――。丸本さんは試行錯誤を続けました。

 

最初の米づくりは3反5畝(3,465平米)の田んぼからスタートし、現在は20町(198,000平米)近くまで広がりました。

丸本酒造ではすべての田んぼの土壌分析を行い、どんな肥料をどれぐらい撒くかなどをデータによって調整しています。さらに、土壌の特性によって麹米用、掛米用に向く田んぼを振り分けし、3年をかけて、それぞれの目的にかなうように土壌改良を施しました。

さらに分析・改善に合わせて、丸本酒造が酒米づくりで何より大切にしていることは、酒米栽培の指導で知られる永谷正治先生の教えである、「三黄(さんおう)の稲作り」の実践です。

これは田植えの時期、稲穂の生育期、稲刈り前の3回、稲を栄養不良にして黄色く枯らし、稲本来の力を引き出すものです。

こうすることで強い稲に育ち、倒れることを防ぐほか、茎や葉ではなく米に栄養がいくようになるのだそう。

「お酒造りに寄り添う、蔵人が納得できる酒米を作りたい。その一心で研究を重ねています」と丸本さんは話します。

自然の循環の中にある酒造り

丸本酒造の田んぼは、すべて農林水産省認定の「有機認定ほ場」です。

  • 化学肥料や農薬を使用せず2年以上経過した土壌で栽培を行うこと
  • 他の田畑や近隣施設からも農薬が飛散していないこと
  • 有機栽培された種や苗を使うこと

など、厳しい基準をクリアしています。

「オーガニックというと人に対する安心、安全が着目されがちですが、私たちは農作物を取り巻く自然に寄り添った農法ととらえています」と丸本さん。作物を取り巻く土、水、そこに生きる生物、大気はすべて繋がっていると考え、その環境を保ち、守ることを何より大切にしています。

また、精米工程で出る米ぬかや発酵工程で生まれる酒粕は、田んぼに撒くことで窒素やミネラル分を与える肥料にもなります。酒造りを自然の循環の中に位置づける取り組みを、丸本さんは行い続けています。

10年先の未来へ~ネクストビジョン~

丸本酒造麹作りの様子

丸本さんがネクストビジョンとして掲げるのは、「人を幸せにする酒造り」。

農業はもちろん、発酵を相手にする酒造りはまさに生き物相手の仕事です。丸本さんは科学的なデータを大切にしつつも、同時に科学ではまだまだ解き明かせないことがたくさんあることを肌で感じていると言います。

「農」といえる酒蔵の仕事について、「手を動かしながら、自然や生き物、大きくいうと宇宙についての多くの情報をダイレクトに受け取っている――。これはある意味、とてもありがたく、幸せな仕事」と語る丸本さん。次は、その幸せを、日本酒を飲んでくれる“飲み手”へと繋げたいと考えているそう。

自然や原料があって、お酒を造る人間がいて、最終的に“飲み手”が体に取り込む人間がいる。そこに関わるすべてのものをハッピーにしたい。

それが丸本さんの目標です。

「そう考えることで、日本酒をよりおもしろく、美味しくしていけると信じています」。

『Bar農!Farming & Brewing 2022』出店情報

出店日:9月22日(木)、23日(金) 15:00〜22:00

場所:渋谷ストリーム1階 カクウチベース POP UP SHIBUYA

『Bar農!Farming & Brewing 2022』では44日間にわたり、22の酒蔵が出店中。

イベント期間中は蔵元自らが店頭に立ってお酒を提供する『酒蔵店長企画』や、マイグラス持参の方限定特典などのイベント限定企画を開催しています。

このインタビューを読んだら、ぜひ丸本酒造のお酒とご当主に会いに来てくださいね!

Information

丸本酒造

丸山酒造では、米洗いの際の吸水歩合はコンマ1%まで調整するなど、細心の注意を払い、完成された酒造りを目指しています。周囲の田園風景と一体となった酒蔵は、国の登録有形文化財に指定されている歴史ある建物。現役の酒蔵として酒が醸造されている“生きた文化財”です。酒蔵公開日に見学することができます(要予約)。

住所

岡山県浅口市鴨方町本庄2485

アクセス

[電車]JR鴨方駅からタクシー約15分
[車]山陽自動車道鴨方ICから約5分

営業時間

9時‐16時

土・日・祝は休業 10月~2月は土曜営業

「丸本酒造」の日本酒をご自宅でも楽しもう!

「農!と言える酒蔵の会」の22蔵の日本酒を組み合わせて購入できる特設オンラインショップがオープン。イベント開催中の期間限定だからお見逃しなく!

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